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中村弁護士コラム 第36回

上場会社の委任状勧誘規制について

弁護士 中村直人

もの言う株主の増加とともに、委任状勧誘合戦となるケースが急増しています。

これまで勝敗を左右するほどの本格的な委任状勧誘合戦というものはあまりなく、法的論点も明確になっていませんでした。最近問題となっているポイントをいくつか紹介しますと、まず何が「勧誘」にあたるのか、ということが議論されています。普通に考えれば、「委任状を下さい」と要請する行為ですが、それを超えて他人の委任状勧誘に応じないように要請する行為も含まれるとする説もありますので(龍田・インベストメント21巻1号18頁)、その範囲が問題となっています。

それから会社が議決権行使書と併せて委任状勧誘をすることができるか、できるとしてもそれは妥当かというようなことも議論されています。会社が配付する議決権行使書用紙と委任状用紙は、本人確認の証拠としても使われますから、両方採用することは混乱を招きそうです。

株主が委任状を勧誘する場合にも、委任状勧誘規制は適用があります。株主が委任状勧誘をするときは、会社の招集通知の発送の前からすることになります。総会日の2週間前に発出される招集通知を待っていては、とても委任状の印刷、発送、返送が間に合わないからです。そのため株主の集める委任状には、会社提案議題が書けません。そこでそのような場合に出席議決権の計算の仕方が問題となります。最近出されたモリテックス事件判決(東京地裁平成19年12月6日 旬刊商事法務1820号32頁)では、会社提案と株主提案が完全に両立しない場合には、株主提案に対する委任状は会社提案についても出席したことになるとされています。

委任状勧誘規制に違反した場合の効果はさまざまです。違反した委任状の効果は有効かという問題や、会社側が違反した場合にはその議決権行使は有効かというだけでなく、決議の取消事由になるのかどうか等も問題となります。モリテックスの判決以外に、委任状勧誘府令は会社法にいう「法令」にはあたらないとした判決も出ています(東京地裁平成17年7月7日)。

モリテックスの判決では、会社側が、議決権を行使した株主にクオカードを配付したことが株主に対する利益供与にあたるとして違法とされました。取締役が会社の財産を使って議決権行使に影響を与えようというのは、会社の基本的な仕組みに反するというのです。従って、委任状勧誘合戦などが行われている場合には、粗品の提供は控えるのがいいかと思います。

その他にも実務的には、委任状の真正の確認はどうすればいいのか(特に届出印を押していない場合)とか、当日の採決方法はどうすればいいのか、重複した委任状や議決権行使書はどれが有効なのか、会社提案と株主提案の両方に賛成した議決権行使書は有効なのかなどといった多数の問題が生じています。委任状合戦になりそうな場合には、十分な準備が必要になります。