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中村弁護士コラム 第38回

有価証券報告書の虚偽記載について

弁護士 中村直人

有価証券報告書の虚偽記載の事案が最近増加しています。それも昔のような故意の粉飾だけでなく、社内の不祥事がらみや、不十分な内部統制による虚偽記載など、いろいろなケースが生じています。

裁判例としても、最近虚偽記載関係の事案が続いており、いわゆるコクド事件の東京地裁平成20年4月24日判決は、西武の元役員に対して一部虚偽記載の責任(不法行為)を認めました。これは財務諸表自体の虚偽記載ではなく、有価証券報告書の株主に関する開示についての虚偽記載のケースです。

また東京地裁平成19年11月28日判決も、計算書類を承認した元役員について、旧商法266条ノ3の責任を認めました。そのほかにも、ライブドア事件など、多数の事件が生じています。

取引所でも、有価証券報告書等の虚偽記載に対しては、市場の信頼を守る立場から、厳格な対応をしています。まず東京証券取引所の有価証券上場規程507条は、上場会社が有価証券報告書等に虚偽記載を行った場合には、当該会社に対して注意勧告することができることとしています。注意勧告を行った場合には、その旨を公表します。これは上場会社が有価証券報告書等の虚偽記載を行ったことにより金融庁から課徴金納付命令や訂正命令を受けた場合などに、当該会社に対して再発防止策に万全を期すように促すものです。

また有価証券報告書等の虚偽記載は、場合によっては、上場廃止事由になることもあります(有価証券上場規程601条11号)。

さらに、上場会社が会社情報の適時開示等を適切に行わなかった場合には、取引所は、改善報告書の提出を求めることができます(有価証券上場規程502条)。その改善状況を確認するため、改善状況報告書の提出も求められます(同規程503条)。平成19年度には、東証が改善報告書を求めた事例は、299件に急増しています。

今年の4月から金融商品取引法の内部統制報告書制度が始まっています。昨年は、有価証券報告書の提出会社のうち約5割が不十分な記載としてその訂正を求められました。今次の金商法の改正では、有価証券報告書等の虚偽記載に対する課徴金の金額も大幅に引き上げられます。会計監査人に対する監督の仕組みも強化されており、もちろん甘えは許されません。

虚偽記載の防止は、有価証券という目に見えない商品の市場を確立するために、必須の要請です。故意による粉飾などは論外ですが、不十分な内部統制システムの結果、有価証券報告書等の虚偽記載が生じた場合も、会社や役員は大きな打撃を受けますから、十分な配慮が必要です。