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中村弁護士コラム 第46回

有価証券報告書の早期提出

弁護士 中村直人

金融商品取引法の開示府令が改正され、平成21年12月31日以降に終了する事業年度に係る有価証券報告書から、定時株主総会前の提出が可能になっています(平成21年内閣府令第73号、開示府令17条1項1号ロ、19条2項9号の2)。これは金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」の報告において指摘されていた事項です。同報告書は、「有価証券報告書・内部統制報告書を株主総会への報告事項にすべきであるとの指摘がある」という文脈において、早期提出の制約を解消すべきとしていました。これは将来的に金商法上の開示書類と会社法上の開示書類を一本化することに道を開いています。今回の改正で、有報に添付する計算書類は定時株主総会に報告済みのものでなくても良いことになりました。今回の改正で、有価証券報告書の株主総会への報告までもが求められる訳ではありません。株主総会の報告事項を決めるのは会社法であり、開示府令でそのようなことを決められるわけではないからです。

既に協和発酵キリンなど、12月決算の会社で3月の定時株主総会以前に有価証券報告書を提出する予定としている会社が出ています。

有価証券報告書を総会前に提出したからといって、株主総会における議題や、法的な意味での説明義務の範囲が変わるわけではありません。あくまでも金商法上の開示書類の取扱いの問題に過ぎないからです。しかし実務的には、有価証券報告書に記載されているような事項について質問が出されることが予想されます。説明義務がないから回答しないというわけにもいきません。具体的に、どのような項目に株主の関心が集まるか分かりませんが、真面目な株主であれば、研究開発活動や財政状態・経営成績・キャッシュフローの状況の分析、設備投資等の概要などが注目されるかも知れません。また主要な経営指標などは、有報の方が情報が豊富で見やすいかも知れません。一方、決算短信やコーポレートガバナンス報告書で開示済みの事項も多いので、それほど大きな変化ではないようにも思われます。なお、内部統制報告書に重要な欠陥がある旨記載することとなった場合は、それが適時開示の対象となりましたから、その点はいずれにしても総会前に開示されることになります。

実務的には、「対処すべき課題」など重複する記載事項も多いため、事業報告や計算書類などとの記載のズレ、不一致がないかどうかとか、ある場合にはどうしてそうなるのかといった点についての想定問答の用意は必要でしょう。また有価証券報告書を早期に開示する場合には、その後、違算等によって修正が生じないように十分注意する必要があります。

なお、現在有価証券報告書の記載事項について、開示府令の改正のパブリック・コメントが出されています。もしこの通り改正がなされると、有報では個人別の役員報酬が1億円以上になる場合には、その者の役員報酬は個別開示することになりますから、総会への影響も大きいかも知れません。

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