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中村弁護士コラム 第48回

買収防衛策の廃止

弁護士 中村直人

最近、買収防衛策を廃止する会社が増えているという報道があります。これまで600社強の会社が買収防衛策を導入し、その内50社前後が廃止しているようです。ただし、その内7〜8割は企業結合等があって株主構成が変わり、買収防衛策が必要でなくなったために廃止したものといわれています。したがって、環境の変化がないのに廃止をした会社はそれほど多くはないようです。

リーマンショック以来、金融はタイトであり、敵対的買収を行うファンドなどはすっかり影を潜めました。そのようなファンドにお金を出す投資家や金融機関は少なくなり、投資のレバレッジも効かなくなったようです。

しかし敵対的買収というのは、株式の上場制度が始まって以来、絶えたことはありません。戦前も戦後も、また国内も海外も、どこでもしばしば起きるのです。金融が緩和されたり、事業会社に体力が生じてくれば、再び活発化する時期が来るでしょう。

平成18年に金商法(当時は証取法)が改正され、公開買付制度が変わりました。公開買付をする者の開示する情報が充実し、発行会社には質問権が与えられました。また公開買付期間が短ければ、30営業日まで延長を請求する権利も発行会社に付与されました。その意味で、発行会社が情報を入手し、それに対して意見を述べる機会というのは一歩前進しました。そのため、既に公開買付制度の下での各種手段で十分であるとして、買収防衛策を廃止する会社も散見されます。しかし、公開買付制度は、公開買付が始まった後の手続規制であり、また検討期間があるといってもそれほど長期間ではありません。一方、買収防衛策は、事前の情報開示、検討期間確保のルールであり、やはり両者には格段の差があります。また後者の場合、不適切な公開買付に対して対抗策をとる余地もあります。そのようなことを考慮しますと、公開買付制度で十分代替できるわけではないと思われます。

一方、買収防衛策を維持するには、負担もあります。2年か3年程度ごとに株主総会に付議するのが通例ですし、その場合、どれだけ賛成が得られるか心配になります。また多くの場合、新株予約権を付与するなどの対抗策を用意していますから、発行済株式総数の2倍以上の授権株式数を確保しなければなりません。それはエクイティものによる資金調達の制約になっていますし、授権枠を拡大するためには定款変更が必要で、それが困難という障害もあります。また買収防衛策を導入しているということが、投資家からマイナスのイメージで見られないかという懸念もあります。株価への影響もよく分かりません。

現在の経済情勢では、敵対的買収のリスクは非常に低いと思われますが、だからといって廃止してしまうと、将来そのようなリスクが高まったときに再導入することは可能かという問題があります。その時点で必要な授権枠が残っているかどうかといった技術的な問題もあれば、廃止する理由と再導入する理由をどうやって矛盾なく説明するか、という問題もあります。

今後、会社法の改正などが行われた場合、独立取締役が義務化される可能性もあります。そうなると、敵対的買収の攻防も様相が変わってくるかも知れません。また役員報酬の開示制度が始まりましたので、報酬面から日本の経済界の在り方が変わる可能性もあります。その場合には、敵対的買収にも反対しづらくなるかも知れません。敵対的買収の是非は、それが価値を生むのかどうかということだけが注目されてきましたが、富の分配の変更や富の移動が起きるということも認識しなければなりません。そうすると民主党政権下で、どのような舵取りがなされるのかも見極める必要があります。

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