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中村弁護士コラム 第51回

自己株式の消却

弁護士 中村直人

自己株式の消却の発表が増加しているようです。自己株式をそのまま保有していることと、消却をすることとは、どこが違うのでしょうか。

市場では、自己株式を消却することで、保有していた自己株式が市場に流通することがなくなるかのように感じるらしく、そこで株価に積極の材料と見ているようです。しかしそれは勘違いです。会社法では、自己株式を消却しても、その分授権株式数が減少するわけではありません。自己株式を保有していようと保有していまいと、自己株式の処分や新株の発行は同じ手続きで行うことが可能ですから、ダイリューションの可能性は変わりありません。

それではそれ以外の場面で、自己株式で保有していることと、消却することで、どういう違いがあるか、検討してみましょう。まず、会社の会計処理が違ってきます。自己株式処分の場合は、自己株式の簿価に応じて自己株式処分差益又は差損が発生します。これは「その他資本剰余金」を増減させることになります。一方、新株の発行ですと、払込金額の2分の1以上を資本金としなければなりませんし、残りの金額は資本準備金となります(会社法445条)。つまり配当拘束の有無や、登録免許税の有無など、大きな違いが生じ得ます。その他には、解釈は定まっていませんが、自己株式に担保を設定できるかとか、自己株式に強制執行ができるかなどという議論があります。

会社法以外では、金商法上の相違も重要です。金商法では、「買付け」とか、「譲受け」などという言葉が出てきます。この場合、対象物の所有権を移転する行為を指すといわれていることから、既発行のものの移転を指すものと解するのが一般です。したがって、自己株式の処分による移転はこれに含まれるのが通例です。一方、株式の新規発行は、既発行の株式ではありませんから、「買付け」や「譲受け」には含まれないとするのが通例です。これを含めようとする場合には、「新規発行取得」などといって、別段の取扱いを定めています(金商法27条の2第1項4号)。つまり、会社法では、自己株式処分と新株発行は、同じ経済行為と見て、なるべく同じ取扱いをしようとしているのですが、金商法の世界では、両者はまったく別物と取り扱われているのです。

したがいまして、会社としては、あるいは株主としても、自己株式処分という選択肢と新株発行という選択肢の両方を持っているか、それとも新株発行の選択肢しかないかは、随分異なってくることになります。そこまで考えると、わざわざ自己株式消却をするのはもったいない感じがします。

それ以外には、投資指標としての取扱いがありますが、例えば1株あたり利益などの算出では、自己株式を除外するのが一般ですので、特段の差は生じていないようです。