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中村弁護士コラム 第55回

取締役会における特別利害関係取締役

弁護士 中村直人

会社法によると、取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができないものとされています(会社法369条2項)。

これは、取締役は会社に対して忠実義務を負っているところ、別途当該議決に個人的な利害関係を有している場合は、当該議決に際して適切な判断がなされない恐れがあることから、その取締役はその議決には加わらないこととしたものです。その場合、当該取締役は、議決権を有さず、取締役会の定足数も、その取締役を除外して計算されます(同法369条1項)。特別利害関係人にあたる場合、その取締役は、決議に参加できないだけでなく、審議にも参加できないのか、あるいはその議案の審議に際して取締役会に出席することもできないのかは、説が分かれています。判例上は、特別な利害関係がある者は、取締役会の議長にはなれないとされています(東京高裁平成8年2月8日資料版商事法務151号142頁)。なお、特別利害関係にあたるとしても、それはその議案限りのものであって、取締役会全体について議決権を有さなくなるものではありません。そのため、取締役会の招集通知などはしなければなりません。

この特別利害関係の範囲は、明確ではありません。会社法は、特段の定義を置いていません。学説は、「会社に対する忠実義務を誠実に履行することが定型的に困難と認められる個人的利害関係ないし会社外の利害関係」としています。しかしそれは評価概念ですから、個別のケースで説が分かれてしまいます。

たとえば、代表取締役選任議案について、その候補者となる取締役は、特別利害関係はないとされています。逆に、代表取締役を解任する議案の場合は、当該解任対象の取締役は、特別利害関係があるとされています。また株式の譲渡制限がある場合に、その承認議案について、その譲渡人又は譲受人である取締役は特別利害関係にあたるかどうかは説が分かれています。取締役の報酬について、株主総会の枠の決議に基づいて取締役会で具体的な支給額等の決議をする場合、支給対象取締役は、特別利害関係にはないと解されています。自己取引の承認議案については、当該自己取引の当事者となる取締役は、特別利害関係があると解されています。

実務的には明確でないケースが沢山あります。グループ会社間で役員を兼務している場合などにおいて、そのグループ間の取引に関する議案があったとき、その兼務取締役は、特別利害関係があるのかということも議論がなされています。最近、他社の社外取締役を兼務する事例が増加していますが、その場合も同様の問題が生じます。ストック・オプションの付与については、それが報酬の決議に基づく付与の場合、有利発行決議に基づく場合、株主総会の決議にはよらない場合など、いくつかの付与方法があり、それぞれに分けて検討する必要があります。具体的な報酬の決議としてストック・オプションの決議をする場合には、付与対象取締役は、特別利害関係にはあたらないとする考え方が強いようです。単純に新株予約権を役員に付与する場合には、自己取引となり、付与対象者は特別利害関係があるとする説もあります(参考として、「新株予約権ハンドブック」195頁)。社外取締役の責任限定契約の締結に関する議案について、当該締結者たる取締役が特別利害関係に該当するかも明確ではありません。取締役会の免責決議については、対象取締役は特別利害関係にあたるとされています。

取締役全員が特別利害関係人となる場合は、1人も議決権を有するものがいなくなり、当該議案の決議をすることはできません。そこで、例えば取締役全員に新株を割り当てる場合、取締役を二つのグループに分けて議案を二つにし、それぞれ付与対象者以外の取締役がその議案を可決するなどという方法が採られています。

特別利害関係を有する者があったとき、議事録には、その旨及びその者が審議・採決に参加しなかった旨を記載するのが通例です。議長を交代したときも、その旨記載します。

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