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中村弁護士コラム 第56回

第三者委員会

弁護士 中村直人

ここ10年くらいのことですが、第三者委員会という仕組みがよく用いられるようになりました。利用されるケースは、不祥事の調査、敵対的買収防衛策の判断、MBOの適正性の判断などです。しかし第三者委員会については、特に法的な根拠や規制はありません。日本弁護士連合会が「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を策定していますが、これも法的なルールではありません。

このような仕組みが広がることとなった理由ですが、不祥事等を起こした場合、その経営者自らが調査、報告しても、誰も信用してくれません。利害関係者だからです。世の中は、「本当はもっと不都合な事実があるのではないか」と疑いの目で見ます。また何らかの処分をしても、自分自身で処分を決めれば「甘い」と非難されます。しかし独立した第三者の意見に従ったのであれば、少しは納得感も生じます。したがって、元々は、消費者や取引先、世の中からの信頼を取り戻すため、外部の専門家に依頼して、信頼できる調査、対処をしようというところに動機があったものと思われます。そこには、どのような意見を出されても甘受しようという「潔さ」があったのです。

一方で、第三者委員会には限界もあります。何を調査するか、いかなる事項について報告をするかということも委託者との合意で決まりますし、どこまで強制的な調査権があるかといえばすべて任意の調査しかできません。関係者が嘘をつけばそれを嘘だと立証することはかなり困難です。またいかなる判断基準で判断をするのかということも法的には決まっていません。裁判所における立証と同じ程度なのか、それよりも緩くて良いのか、各委員会の判断になります。また報告書の利用者は、すべてのステーク・ホールダーであり、広く世間一般といって良いのですが、しかし委託者はその不祥事を起こした会社であり、報酬も会社から支払われます。そこに根本的なねじれの問題があります。そのため委託者に迎合的になるのではないかというリスクは常について回りますし、不祥事が起きたときだけ第三者委員会を立ち上げて中間報告だけして、ほとぼりが冷めたら最終報告はしないで放置するなどといったケースもあるようです。依頼する側も、言うなりの意見を書くものと思って、たんに世間の批判をかわすためとか、権威付けのために利用しようと考える輩もいるようです。そのような場合には、たんなる「隠れ蓑」に使われてしまいます。そんなものなら、ない方がマシです。

結局、どれだけ中立で、公正な判断ができるかということについては、委員の良心に大きく依存しています。委員の経験を積んだ方であれば、委員を引き受けるときに、こういった事情を説明して、十分な活動ができる環境を約束させます(たとえば「場合によっては社長の退任を要求することもありますよ」と覚悟させるわけです)。そしてどれだけ誠実な仕事をしたかは、その報告書の記述で判断されることになります。専門家が見れば、実はよく分かるのです。

最近では、第三者委員会の報告がでても、その内容に従わない会社も出てきました。第三者委員会の報告にはもちろん法的強制力はありません。元々調査に限界があり、誠実性にもリスクがある上に、仮に報告を出しても企業が従わないということになれば、第三者委員会を設置する意味はなくなります。

大きな視点で見れば、規範の遵守の体制は、おかみに依存するのではなく、自主自律的な仕組みで迅速かつ合理的に対処しようということです。そのため法律のようなハードなルールではなく、柔軟なソフトルールに依ろうというのです。それはそれぞれの世界に自律的・自己完結的なコンプライアンス装置を組み込むものであり、コストの低減や国への依存の減少(小さな政府)、迅速な処理といった時代の大きな流れに沿うものです。しかし法的根拠がないだけに、どこまで定着し、世の中から信頼されるか、今、試練の時にあるようです。

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