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中村弁護士コラム 第57回

相場操縦規制と風説の禁止

弁護士 中村直人

金融商品取引所の目的は、公正な価格を形成することです。それによって効率的な資金配分が行われ、経済の発展に資することができます。また公正な価格が形成されているからこそ、投資家も合理的な投資が行えるようになり、投資資金が市場に集まってくることにもなります。公正な価格形成のためには、市場において不公正な行為が行われたのではいけません。そこで金商法は、不公正な取引等として、いくつかの行為を規制しています。その中に、相場操縦(金商法159条)と風説の流布(同158条)があります。

相場操縦には、@仮装取引(同159条1項1〜3号、9号)、A馴れ合い取引(同条1項4〜8号、9号)、B変動操作・見せ玉(同条2項1号)、C市場操作情報の流布(同条2項2号)、D虚偽情報による相場操縦(同条2項3号)があります。おおざっぱに言うと、嘘の取引によるもの(@A)、実態はあるが相場を誤解させるためのもの(B)、不適切な情報の流布(CD)という3つに分けて考えることができます。この内、嘘の取引をしたり、嘘の情報を流すような行為が不当であることは、すぐ理解できると思います。しかしBの実態はあるけれども相場を誤解させるような取引については、真っ当な取引との区別は容易でありません。普通の取引をしても、相場はそれによって変動してしまうため、それだけでは不当な行為ということはできません。しかも最高裁は、「誘引目的」という主観的な目的が要件であるとしていますので(協同飼料事件最決平成6年7月20日判例時報1507号51頁)、立件するには主観的目的の立証という困難がつきまといます。学説は分かれていますが、実際には、行った取引・注文の外形的な要素から、相場を変動させるべき一連の取引等であるかどうか、誘引目的があるかどうかを判断することになります。

実際に違法とされた事例、課徴金を課せられた事例を見ると、直近の価格より高い価格の指し値買い注文をする場合(逆に安い価格の指し値売り注文をする)や、時間を追って順次指し値を1円刻みに高くした買い注文を出す場合、板上の売りや買いを厚く見せるために成立可能性のない価格で大量の売り・買いの注文を出し成立前に取り消す場合(見せ玉)などがあります。最近では、アルゴリズム取引の特性を利用した相場操縦の事例などもあります(北越紀州製紙株式に係る相場操縦事件。証券監視委平成23年1月25日公表)。

上場会社に関連するところとしては、自己株式を取得する場合に相場操縦にならないように気をつけなければなりません。これについては、取引府令17条が、取引の仕方や取引量等について詳細に定めています(セーフハーバールール)。最近では、自己株取得信託に委ねることも多いようです。

風説の流布(金商法158条)は、相場の変動を図る目的をもって、風説を流布し、偽計を用い、または暴行・脅迫をすることを禁止しています。風説というのは合理的な根拠のない情報のことをいいます。最近では、ライブドア事件やジャパン・メディア・ネットワーク事件などがあります。またインターネットで嘘の書き込みをして株価を変動させようという事件も増えています(証券監視委平成23年12月21日公表など)。発行会社としては、勝手に会社が倒産するかのような書き込み等をネット上でされ、大変迷惑をこうむる事例なども生じています。そのような場合には証券監視委に通報することが多いようです。

相場操縦や風説の流布は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金(併科も可)という刑事罰があるほか(197条1項5号)、一部は課徴金の対象にもなります(同173条、174条、174条の2)。

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