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中村弁護士コラム 第67回

平成25年金商法改正 〜インサイダー取引規制の拡充

弁護士 中村直人

このところ、毎年金商法の改正が行われています。平成25年には、いわゆる公募増資インサイダー事件を契機に、一定の要件の下、重要事実の伝達が禁止されることになりました。公募増資インサイダーというのは、公募増資に係る情報を、証券会社の引受部門が営業部門に伝達し、それを顧客に提供することで不当な取引を誘発していた一連の事件です。インサイダー規制は、これまで株式等の「取引」の禁止だけであったので、「情報伝達」の禁止にまで拡充されたことは重要です。この改正は、金融審議会金融分科会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」の平成24年12月25日付報告に基づくもので、本年4月1日に施行されます。

今回の規制は、禁止規定と、罰則規定の二段構えになっています。改正金商法167条の2は、まず禁止規定を定めています。@未公表の重要事実を知っている会社関係者が、A公表前に取引をさせることにより利益を得させる目的をもって、B情報の伝達または取引の推奨を行うことの禁止です。

違反に対する刑事罰については、さらにC当該行為により公表前の取引が行われた場合、に限定して、5年以下の懲役及び/または500万円以下の罰金(法人は5億円以下の罰金。207条1項2号)としています(改正法197条の2第14号)。Cの取引行為がなかったとしても、禁止規定に違反していれば金商法違反になります。例えば違反者が金融機関であれば、種々の行政処分の対象になります。

課徴金の定めもあって、証券会社の場合はその月の仲介手数料額の3倍等、その他の者であれば、利得相当額の2分の1などとなっています(改正法175条の2第1項)。さらに違反行為者の氏名公表制度も設けられました(改正法192条の2)。

禁止されるのは、あくまでも「公表前取引によって利益を得させる目的」がある場合です。単純に当社の株式の購入をお勧めするような場合は該当しません。証券会社等でない限り、普通の事業会社ではそうそうは当たらないはずです。種々のケースについては金融庁の平成25 年9 月12 日「情報伝達・取引推奨規制に関するQ&A」を参照してください。他方、目的犯だから否認していれば立件されないだろうと高をくくるのも、間違っています。こういうインサイダー取引というのは、一回限りで終わることはなく、一度おいしい思いをすれば何度もずるずるとやってしまいますので、全体を見れば目的があったことは一目瞭然です。簡単に立証できます。

「重要事実の伝達」だけでなく、「推奨行為」も処罰されるのは、重要事実の伝達だけを規制すれば、「まあ、私のことを信じて、悪いことはいわないからA株を買っておきなさい」などというケースが尻抜けになるからです(なお、この場合、そう言われて取引をした者は、重要事実を知らないので、インサイダー取引規制に抵触しないことがあります)。

実務の対応としては、まず、各社の内部者取引規程または情報管理規程を見直して、正当な理由のない情報伝達の禁止を明確化すべきです。また、M&Aなど重要事実がしばしば発生する会社の場合には、情報の管理体制を見直すことが考えられます。たとえば、@情報伝達の記録化を行って、トレーサビリティを確保すること、A伝達する場合には、伝達する正当な理由、目的を明確化させること、B伝達の相手方への秘密保持義務、取引回避義務の設定を義務づけること、Cこれらについて役職員への通知、研修、マニュアルの改訂等により周知をすること、などです。

なお、情報提供に関しては、すでに平成25年9月30日の横浜地裁判決(日興コーディアル事件)がでています。

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