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中村弁護士コラム 第74回

平成26年会社法改正(6)〜反対株主の買取請求に関する改正

弁護士 中村直人

改正会社法(整備法)では、組織再編等における株式買取請求の制度の改正が行われました。これは、実務で困っていた点の修正を行うことが中心です。

まず買取口座の制度が創設されました。これは、組織再編等を行う場合には、振替株式の発行者である会社は、買取請求株式に係る振替を行うための口座(買取口座)を振替機関等に対して申請することになりました。そして、組織再編等に反対の株主は、株式の買取請求をしようとするときは、その買取口座にその株式の振替を申請しないといけなくなりました(振替法155条1項)。改正前は、買取請求をすると、会社が承諾した場合など一定の場合にしか撤回ができないことにされていましたが(改正前会社法785条6項等)、実務上、買取の請求をしながら振替の手続をしなければ、そのまま買取の実行を免れることが可能で、ザル法のようになっていました。これでは取り敢えず買取請求をして、株価が下がれば会社に買い取らせ、株価が上がれば知らん顔して市場で売ってしまうという機会主義的な行動が可能になってしまいます。そこで改正法では、買取口座への振替を義務づけました(振替法155条3項)。この振替申請をしない買取請求は無効になります。

次に買取請求がなされた株式について、その買取の効力が発生する時期について、存続株式会社等の場合改正前は、代金の支払時に株式が移転するものとしていましたが(改正前会社法798条5項等)、改正法では、組織再編等の効力発生日としました(会社法798条6項等)。これは、買取請求をしても、その価額について合意等ができない期間は代金の支払いが未了なので、その株式は買取請求をした株主のものということになり、その間配当などを受け取ることができます。一方、買取請求の制度では、価格決定の申立に係る裁判で決められた価格について、効力発生日から60日を経過した後の期間について年6分の割合の利息を支払うことになっており(会社法798条4項)、いわば二重取りができてしまうのです。そこで株式が移転する時期を効力発生日として、そのような不当なことが起きないようにしました。

更に買取請求に際して、会社側からその代金を仮払いする制度が設けられました。改正前は、上記の通り、裁判所が決定した価格につき、年6分の割合の利息を支払うものとされていましたが、今どき年6%の利息などというのは恐ろしく高額な利率です。決定が延びれば延びる程、買取請求をした株主は高い利息を頂くことができてしまうのです。それでは不当だということで、会社は、会社が公正だと認める額を支払うことができることにしました(会社法786条5項等)。これにより、その支払い(拒否すれば供託)をした金額については、年6分の利息を支払わないで済むことになります。

その他、簡易組織再編等の存続会社側や簡易事業譲渡の譲受側では、従来株主の買取請求が認められていましたが(改正前会社法797条2項2号等)、改正法ではその買取請求の制度を廃止しました。これは、会社に大きな影響を及ぼさないから簡易手続としているのに、買取請求を認める必要はないであろうという理由です。

このように株式買取請求の制度はいろいろ変更されましたが、いずれも実務的に困っていた点の改正です。これで発行会社側としては、円滑に手続ができるようになりました。

もともと反対株主の買取請求の制度というのは、組織再編等のおまけの手続とみられがちですが、本当はとても重要な制度です。M&A等の組織再編等は、株主の多数決で行って良いのか、株主価値が上がるのであれば反対株主の株式等を取り上げて良いのか、会社法としては功利主義に徹して企業価値が向上する組織再編等はどんどん推奨すべきなのか、ということは、根本的な会社法のあり方の問題です。その際、肯定・否定どちらのスタンスに立つにしても、M&Aによる富の合理的な配分の制度として、円滑で、公平で、安価な(手続コストがかからない)、退出の仕組み(買取請求制度)があるのか、ということは、とても重要な要素になります。この制度が使いやすいものになればなるほど、効率的で公平な経済の仕組みが出来上がっていくことになります。

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