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中村弁護士コラム 第80回

子会社関連の不祥事と株主総会での説明

弁護士 中村直人

最近、東芝、富士フィルム等、子会社関連の不祥事が多発しています。M&Aの後ののれんの減損も多くなっています。これは株主総会でも多く質問されることでしょう。その際、会社側としてはどの程度説明する必要があるのか、少し検討してみましょう。

株主総会での説明義務の範囲については、報告事項は報告書類とそれらの附属明細書の記載事項を敷衍する程度、議案に関しては参考書類の記載を敷衍する程度、というのが一応の目安です。しかしこれはかなり狭いので、学説の中には「株主が知りたいと思うようなことは説明すべし」とする説も有力です。実務的には、前者に当たる事項は必須で、後者もできる限り説明するという考え方でいます。

少し例を考えてみましょう。子会社で不祥事があって、特別損失が出たとします。まず計算書類の報告の観点からすると、特別損失などは株主が注目する項目であり、しかも経常的な損益ではないのでその内容は計算書類だけでは分かりません。従って、こういった特別損失や、それ以外にも大きな変動のあった勘定科目などについては、その理由、概要などを説明しないと計算書類が理解できませんので(会社の概要を知らせることが報告目的です)、説明が必要です。また適時開示している事項については、当然株主の理解のために必要だから適時開示しているわけですから、それは説明します。もし粉飾等で決算の修正がなされれば、それはそれ自体重大事でありまして、それについてしっかり説明すべきことは当然です。

また不祥事があると、事業報告の「事業の経過及び成果」や「会社が対処すべき課題」、「その他」といった項目でそれについて触れられていることが多いでしょう。また「内部統制決議の概要とその運用状況」においても、不祥事があればそれについて触れていることが多いでしょう。最近では、内部統制に関しては、グループ全体を含むものとされていますから、子会社に係る不祥事であっても関係します。このように、事業報告に記載された事項についての質問については、その概要程度のことは説明する必要があります。

さらに監査役等については、監査報告に監査の「方法」と「結果」が記載されており、その概要程度のことは監査役等に説明義務があるとされています。不祥事がありますと、必要的記載事項または任意的記載事項として、監査報告にその内容や対応等が記載されることもあります。内部統制については「相当性」の意見も記載します。これらの記載に関することについては、監査役としてはその概要は説明する必要があります。もともと監査役は、取締役の職務の執行を監査しているのですから、大きな不祥事など、取締役に義務違反がなかったのか疑われるような事象があれば、それについてはきちんと説明すべきです。

これら以外にも、注記表においては、継続企業の前提に関する注記やその他の注記が沢山記載されており、その記載に関する事項は説明する必要があります。うっかりしないよう、記載事項は確認しておきましょう。

他方、連結計算書類は、これは基本的には情報の提供をするだけの趣旨で報告されているものですから(経営の受託者としての報告義務ではない)、それについて直ちに深い説明義務が生じるわけではありませんが、上記の通り、事業報告の記載や内部統制は連結ベースになっており、そちらで説明義務が生じますから、実務的には区別なく、むしろこちらを主として、説明しています。最近、有価証券報告書を総会前に提出する会社も増えてきました。こちらは金商法上の書類であり、その内容について説明義務が生じるわけではありませんが、いずれ開示される情報ですから、質問されたら可能な限り回答しています。
決議事項との関係では、もしその不祥事が取締役の責任あるいは能力に関わることであれば、その再任議案に関して、相応の説明義務が生じるものと考えられます。この取締役の再任議案は国会の予算委員会みたいなもので、当期の経営に関しては広範に質問できると考えられます。取締役の報酬議案も、無関係とは言えません。

このように説明義務の有無の判別には、@各書類の記載事項かどうか、A記載事項でなくても株主が知りたいと思うような事項か、という手順で判断します。

他方、当社では不祥事は発生していないが、他社の事例に鑑み、当社でも質問は出るだろう、ということも多いかと思います。この場合には、上記のような、何らかの報告書類に記載があることは回答するとして、それ以外の項目については、特に説明義務ということまではなく(但し、まったく回答しないというのは問題です)、一般的な事項として可能な限り説明することでよいかと思います。工事進行基準とか、のれんの減損テストとか、M&Aの手順とか、内部統制の統制環境に関することなど、一般的な考え方を説明すればよいかと思います。

最近では、社外役員に対する質問も増加し、不祥事関連やガバナンス関連の事項については指名されることも多いので、社外役員も本腰を入れて自分の考え方を整理しておく必要があります。

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