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中村弁護士コラム 第53回

招集通知のウェブ開示

弁護士 中村直人

最近、株主総会招集通知のウェブ開示が広まりつつあります。招集通知を行うに際し、株主総会参考書類を交付し(会社法301条1項、302条1項)、事業報告、計算書類(同437条)、及び連結計算書類(同444条6項)を提供しなければなりません。最近では開示が充実してきたこともあり、その量はかなり多くなってきています。また、今後IFRSが導入されると、注記表の記載が相当多くなるのではないかといわれています。そのため、紙ベースで招集通知とともに印刷して郵送すると、そのコストが高額になり、場合によっては多すぎて封入の機械に適合しなくなることも考えられます。そこで、その一部をウェブで開示することによって、紙ベースからははずすという動きが広まっているのです。

ウェブ開示を認める法的根拠は、実は一つではありません。四つもあります。それは下記の表の通りです。株主総会参考書類、事業報告、計算書類、連結計算書類ごとに別の条文があるわけです。ウェブ開示を利用するためには、それを可能とする定款の規定が必要です。多くの会社は既にこの定款規定を持っています。ウェブ開示を利用する場合には、取締役会でそれを決めます。株主総会参考書類については、株主総会の招集を決める取締役会でその内容を決めることから、その取締役会でウェブ開示によることも決めます(会規63条3号イホ)。それ以外のものについては、特に根拠条文はありませんが、重要な事項として取締役会で決めるのが適切といわれています。

ウェブ開示を利用する場合、株主総会参考書類と事業報告については、監査役が異議をいえる制度があります。これは株主総会参考書類と事業報告については、その内ウェブ開示が利用できる事項が広範にわたっており、場合によっては個別の事情によりウェブ開示にせず紙ベースで直接株主に開示した方がいい事項もあるかも知れません。その場合、監査役が異議を述べて、紙ベースで交付・提供させる制度を設けたわけです。計算書類と連結計算書類については、そのような制度はありません。計算書類についてはそもそも利用できるのが注記表だけに限定されていますし、連結計算書類は、会社法上の位置づけは参考資料に過ぎないとされているからだと思われます。

また監査役は、ウェブ開示を利用したときに、株主に現に提供されるものはその監査対象物の一部であることを株主に通知することを、取締役に請求できます。これは、監査報告には、事業報告や計算書類、連結計算書類が適正である旨書いてあるわけですが、実際に提供されている紙ベースのそれらは、その一部でしかなく、記載すべき事項が欠けているわけですから、株主に監査意見が間違っていると誤解されないよう、監査対象の一部である旨通知することを要請するものです。実務的には、監査役から、異議がないこと、また一部であることの表示を請求しないことを書面で確認することも考えられます。

ウェブ開示を利用した場合、総会当日に、その省略した部分をどう報告等するかということも課題になります。紙ベースのものを印刷して、総会の受付で配布したり、自由に持参できるようにする方法や、スクリーンにその内容を映し出す方法などがあります。特に何らの対応もしていない会社もあります。

ウェブ開示を利用した場合に心配になるのは、もしインターネットが障害によって利用できなくなった場合に、総会の手続きが違法にならないかということです。この点、障害があった場合の法律効果については、特に法律は決めていません。もともとウェブ開示は、省令上の制度ですから、それは当然です。法務省の説明では、中断が生じても、直ちに違法となるわけではなく、開示期間全体として継続して行ったといえるかどうかという観点から実質的に判断するとしています。実際には、わずかな中断であれば、問題とはされないものと思われます(参考として、会社法940条3項)。

  参考書類 事業報告 計算書類 連結計算書類
条文会規94条会規133条計規133条計規134条
定款規定必要必要必要必要
範囲議案以外社外役員、会計監査人、辞任監査役、内部統制決議、買収防衛策個別注記表連結計算書類、監査報告
意思決定取締役会
会規63条3号
イホ
(取締役会)
重要事項
(取締役会)
(取締役会)
監査役異議ありありなしなし
周知アドレス参考書類に記載
会規94条2項
通知
会規133条4項
通知
計規133条5項
通知
計規134条5項
「監査の一部」の記載請求なしありありあり
掲載期間招集通知を発出する時から定時株主総会の日から3ヶ月が経過する日までの間、継続して掲載

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