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中村弁護士コラム 第62回

最近の新株発行に関わる緒論点の状況

弁護士 中村直人

今回は、最近の募集株式の発行に関わる緒論点の状況を概観してみます。法制度や取引所の制度の改正の他、多くの判決例が出ているので、全体を詳しく見るのは大変です。そこで本稿では、論点の所在だけをピックアップしていくこととします。

まず新株発行と有利発行の問題については、有利発行に当たらないとした事例として、オートバックス事件決定(東京地裁平成19年11月12日・金融・商事判例1281号52頁)、オープンループ事件決定(札幌地裁平成20年11月11日・金融・商事判例1307号44頁)などがあります。新株発行と不公正発行との関係については、不公正発行に該当するものとして、クオンツ事件決定(東京地裁平成20年6月23日・金融・商事判例1296号10頁)、日本精密事件決定(さいたま地裁平成19年6月22日・判例タイムズ1253号107頁)、否定したものとして、昭和ゴム事件決定(千葉地裁松戸支部平成20年6月26日・金融・商事判例1298号64頁)、ナウローディング事件決定(東京高裁平成21年3月30日・金融・商事判例1338号50頁)などがあります。さらに新株予約権の事例については、ピコイ事件決定(東京高裁平成20年5月12日・金融・商事判例1298号46頁。株主平等原則に違反して不公正発行であると判示)、丸八証券事件決定(名古屋地裁平成20年11月19日・金融・商事判例1309号20頁。有利発行、不公正発行とも認めず)などがあります。非公開会社の事例としては、横浜地裁平成21年10月16日・判例時報2092号148頁などがあります。

募集株式の発行と役員の責任との関係では、アートネイチャー事件判決(東京地裁平成24年3月15日・判例時報2150号127頁)があり、金商法の虚偽記載の責任に関しては、足利銀行事件判決(宇都宮地裁平成23年12月21日・判例時報2140号88頁)があります。子会社の増資に応じたことについての取締役の責任については、さいたま地裁判決・平成22年3月26日・金融・商事判例1344号47頁があります。

文献としては、山田剛志「取締役会決議による買収防衛策と不公正発行」(金融・商事判例1358号2頁、1359号2頁)、篠原倫太郎・青山大樹「出資契約における前提条件と表明保証の理論的・実務的諸問題」(金融・商事判例1370号8頁、1371号8頁)などがあります。

興味深いところで、発行済みの新株予約権の行使条件の変更の可否について、全国保証事件判決(最判平成24年4月24日・判例時報2160号121頁)があります。これは同社の監査役が違法ではないかということで提起し、勝訴した訴訟であり、その点からも注目されます。

架空増資と金商法の偽計との関係については、ペイントハウス事件判決(東京地裁平成22年2月18日・判例タイムズ1330号275頁)があります。金商法192条1項に基づく緊急差止命令の事例としては、無登録業者の募集等を禁止したものとして、東京地裁平成22年11月26日・判例時報2104号130頁があります。

取引所の規則としては、平成21年8月に、東京証券取引所が、有価証券上場規程を改正して、希釈化率の高い第三者割当増資の場合に、独立した者による意見書か、株主総会などの株主の意思確認の手続を要請し(同規程432条)、極端な場合には上場廃止とすることを決めています(同規程施行規則601条13項6号、上場管理等に関するガイドラインW9)。

金商法改正関係では、平成23年度にライツオファリングに関する法令等の改正(平成24年4月1日施行)が行われました。ライツオファリングは、株主全員に無償で新株予約権を割当て、その行使によって資金を調達する方法で、株主は権利を行使することもできるし、その新株予約権を売却することもできるというものです。これによって資金調達の多様化が期待されます。すでにエー・ディー・ワークス社などが発行しています。

また会社法改正の要綱では、支配株主の異動を伴う募集株式の割当てについては、一定の場合に株主総会の承認が必要とされるほか、仮装払込の責任も設けられることになっています。

以上の通り、募集株式の発行に関しては、様々な視点から大きな制度変更や、新しい判決が次々と出されており、フォローアップするだけでも大変になってきました。

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