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中村弁護士コラム 第68回

福岡魚市場株主代表訴訟事件判決について

弁護士 中村直人

平成26年1月30日に、福岡魚市場事件の最高裁の判決が出されました。この事件は、地裁の判決(福岡地裁平成23年1月26日・金商1367号41頁)が親会社による子会社管理責任を一定の範囲で認め、その判断を高裁(福岡高裁平成24年4月13日・金商1399号24頁)が踏襲したため、初めて子会社管理義務を認めた判決ではないかということで、実務に注目されています。なお、最高裁では、子会社管理義務に関する部分の判断はされませんでした。

この事案は、子会社において「グルグル回し取引」などといういわば金融取引がなされており、その在庫が蓄積して不良在庫となり、結局親会社が金融支援したけれども破綻状態となったというものです。親子で役員が兼務しており、取引についても親会社が保証するなどしています。

この事案は良く分析してみる必要があります。地裁の判決は、確かに取締役の監視義務として、「被告らは、・・福岡魚市場の取締役として、福岡魚市場及び(その子会社)フナショクの在庫の増加の原因を解明すべく、・・自ら、あるいはフナショクの取締役等に働きかけるなどして、・・・詳細な調査をし又はこれを命ずべき義務があった」としました。したがって、子会社の不正に関しても、もしその兆候を知れば、親会社取締役としても、何らかの行動を起こすべき義務があるということを判示したものといえます。但し、その調査などを怠ったことによる損害は認定できないとして、それ自体による損害賠償債務は認めず、その後の融資の貸倒れについての損害のみを認めています。この判断は、高裁においてそのまま受け継がれました。

一方、高裁判決は、親会社の取締役がフナショクの経営状況を外部に隠ぺいしたままにしておくために、破綻間近になったフナショクに融資などを行ったとして責任を認めています。これは故意による義務違反の問題であり、注意義務の問題ではありません。また貸付という親会社の行為についての義務違反の問題であり、子会社に対する管理の注意義務という問題でもありません。

つまり本件は、本来、故意犯の事例であって、子会社管理責任のケースではないですし(故意に違法行為をすることが義務違反であることは誰にも異論はありません)、しかも親会社が金融支援を行い、又役員の兼務もしているのであって、特殊な事案です。そう考えると、この判決をもって子会社管理義務を一般的に認めたものと解釈するのは行き過ぎと思われます。

実務的には、@親会社自体が融資、保証、その他の方法により取引に参加している場合には親会社の行為として注意義務を課せられること、A子会社の不正を知った場合には、何らかの行動は取らないとまずいこと、B兼務役員は子会社の不正を知りやすい立場にあること、というあたりを教訓とすべきかと思われます。

最後に、本件は、子会社に対する管理監督の類型ですが、子会社の意思決定に親会社が関与している意思決定類型としては、東京地裁平成23年11月24日判時2153号109頁があります。結論において責任は認めていませんが、子会社の経営判断について、親会社取締役の注意義務を一定範囲で認めたもので、こちらも重要な判決となっています。

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