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中村直人弁護士コラム 第97回

コロナ等の環境変化と今年の6月株主総会

弁護士 中村直人

今年の6月総会は、3月のまん延防止等重点措置解除を受け、コロナ対応とするか、平時対応とするか、悩ましい状況になっている。執筆時点では、筆者の聞く範囲では、平時対応に戻していく方向性の会社が多いようにも思われるが、しかし本稿執筆時点では再びコロナが拡大している状況なので、6月時点では再び緊急事態宣言などが出されている可能性もある。ちなみに3月総会では、コロナ対応で来場を抑制する会社が多かった。結局、6月総会の対応は、招集通知の記載については、校了時点で念のため来場自粛要請などコロナ対応の要素を含め、他方当日のシナリオは、その時点の状況に応じて直近に対応を判断することになろうか。ギリギリまで柔軟に対応するほかない。

その他の課題について見ていくと、バーチャルオンリー総会を可能にする定款変更については、すでに130社以上の会社で定款変更をしていると聞く。6月総会に向けては、いずれにしても会社法改正に伴う定款変更議案があるので、一括して付議することも考えられる。ただし、筆者が現時点で聞く範囲では、バーチャルオンリー総会の定款変更を行う会社は、それほど多くはないようだ。やはりバーチャルオンリー総会にはリスクがあり、ためらわれるようだ。しかしいずれそういう時代になるだろうと判断して定款変更だけはしておくという考え方もある。まずは株主数の少ない会社やIT関係の会社などで実績を積んで、投資家が納得する総会運営方法の確立や、技術的な安心感が醸成されることが必要になりそうだ。

総会運営に関しては、コロナ対応で事業報告などの口頭説明を大幅に短縮化する対応や、質疑時間を短縮する運営等をどうするかという問題がある。もしコロナが拡大する状況でなければ、6月総会では、以前の平時対応に戻して丁寧な説明等をしていく方向性の会社が多いようである。バーチャル総会に移行するのであれば、情報開示の仕方も抜本的に変更するのであるが、そうでないなら緊急事態宣言がないにもかかわらず簡易な総会運営にすることは、やや株主軽視とのそしりを受けないか心配なのである。総会状況のウェブ中継や事前のホームページによる質問受け付け、事前の総会関係情報開示の充実など、この2年間コロナ対応での簡易型総会の代償措置が多数とられてきた。仮に今年の総会で平時対応に戻るのであれば、これらの情報提供サービスを取りやめるのかというと、それはそうではない。このような情報提供サービスは、会社側としては、コロナ対応の代償措置という意識で導入したのであるが、株主から見れば、それをやめることはたんなる情報開示の後退である。当面直ちに取りやめるのではなく、利用の多い制度を残し、利用が少ない制度は取りやめ(ウェブ中継は視聴者が極端に少ないことが多い)、新しい知恵も出していく、といった積極的な姿勢が必要である。筆者が聞く範囲では、事前の質問受付などは、総会運営の効率化、的確化に資するところもあり、バーチャル化・コロナ対応の有無を問わず、広がる傾向のようである。

さらに今年の総会では、別の問題もある。ウクライナ戦争やそれに伴うロシアへの経済制裁、資源その他の価格上昇、電力供給体制の動揺、上海でのロックダウンの影響等、将来の不確実化が著しい。来期の業績予想を開示できるかという問題にもなっている。こういう今後の業績見通しに関する情報に関しては、丁寧な開示が要請されるとともに、逆にインサイダー取引規制との関係で開示できる範囲が限られること、あるいはあくまでも予想に係る将来情報であることなど、慎重な対応も必要である。さらにウクライナ戦争に伴う対ロシア経営戦略(撤退や禁輸の有無等)に関しては、政治・人権と民間経済活動の関係という深刻な課題がある。西欧の企業と日本企業の対応が分かれるところであり、あるべき方針について十分な検討が必要である。ESGの新しい試練である。

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