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中村弁護士コラム 第22回

会社法解説シリーズ[第1回]「会社法の成立について」

弁護士 中村直人

平成17年6月29日、会社法が参議院本会議で可決、成立しました。新しい会社法は、商法から会社にかかる部分を独立させて新しい法律とし、有限会社法や商法特例法などを統合したものです。

会社法は公布日から1年6ヶ月以内の政令で定める日から施行されますが、ニッポン放送・ライブドア事件の影響もあり、敵対的買収防衛策をとるまでの時間的余裕を設けるため、合併等対価の柔軟化にかかる部分については、本体の施行の日のさらに1年後に施行することとされました(附則4項)。

また国会審議の途中で、原案が2箇所修正されました。1点は、原案第179条の市場における自己株式の売却の規定の削除です。一定の要件を満たす自己株式の市場売却の制度は、実務上重要な改正でしたので、削除されてしまったのは非常に残念なことです。2点目は、代表訴訟にかかる訴え却下事由のうち、原案第602条第2号(正当な利益が害される場合等)の削除です。これにより訴えの却下は、不当目的等の場合のみとなりました(同第847条も同様の修正が行われています)。

今回の改正の発端は、商法の「現代語化」でしたが、途中で「現代化」に変更され、各方面からの多様な改正要望を取り入れたものになりました。中小企業政策審議会の報告や、日本経団連の改正要望、対日投資会議専門部会報告、企業結合会計の改正に附随する改正等に加え、過去の数次の改正でアンバランスとなったものの調整などがその背景になっています。そのため、ひとつの特定の改正理念があって統一した改正が行われたのではなく、いわばごった煮のような改正となりました。

会社法は、「商法の改正」ではなく、「新しい法律の制定」です。そのため従来の商法に準拠して設立した会社の会社法への移行については、詳細なみなし規定等の経過措置がとられています。条文を読むとき、この点は留意が必要です。

商法には、商法総則、商行為および海商が残りました。これにより商取引法は商法、会社組織法は会社法、というように別の法律に分かれたことになります。このことは、会社法の目的や理念を考えるとき、重要なポイントになります。たんに民法の特則としての商法というように解されてきたものが、会社法は、より積極的に経済の効率化や企業の円滑な発展を後押しする経済法ないし経済政策法に近づいたことになるでしょう。

今回の改正の大きな方向は、規制緩和であり、また国際的標準化であり、それらの最終的な目標は企業の競争力の強化による企業価値の最大化、経済の活性化です。

このことは、市場主義を原則とし、情報の徹底的な開示をテコに、市場原理で経済の効率化を図ろうとするものです。

金融の世界では、郵政の改革、財政投融資の改革、ペイオフの解禁と銀行等の機能の金融仲介機能へのシフト等により、資金の流れを最終の資金の出し手である家計から、最終の資金の需要家である企業へ、市場原理を利用して最適な資金・リスク配分がなされるよう、改革が行われています。

資金の流れの正常化と会社法の制定、この両者の改革によって、日本の企業も、永らく株式持合等による中途半端な資本主義の下にありましたが、本格的な市場主義の時代に突入することになります。

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