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中村弁護士コラム 第34回

会社法解説シリーズ[第13回]「剰余金の配当規制」

弁護士 中村直人

会社法では、剰余金の配当に係る改正も行われています。改正前商法では、配当は期末の利益処分案によるものと、中間配当の2つだけでしたが、会社法では、配当回数や時期の制限がなくなり、一年中いつでも配当が可能になりました。その結果、「利益処分」という概念はなくなり、期末の期間損益は、そのまま繰越利益剰余金勘定に加算されることになりました。利益処分案によっていたときは、配当の原資は当然に未処分利益ということでしたが、会社法下では、配当原資は別途取締役会等で決めることとなりました。

また改正前商法では監査役型の会社では、配当をする権限は株主総会にありましたが、会社法では、委員会設置会社以外の会社でも、一定の要件を満たせば、定款で定めることにより、取締役会の決議で配当を行うことができるようになりました(会社法459条)。これを利用して既に四半期配当を実施している会社もあります。取締役会が配当を決めることができるとする場合に、株主総会の配当権限をなくしてしまう方法と株主総会にも配当権限を持たせる方法の二通りがあります。双方が権限を持つ場合に、どちらの機関で配当の決定をするかは、実務では取り扱いが分かれたようです。

会社法では、配当をする場合の決議事項が明確にされました(会社法459条1項)。いわゆる日割り配当の考え方も否定されたと考えられています。

会社法では、いわゆる現物配当についても定めを置いており、従来不明確であったその手続や要件などを明確にしました。具体的には現物配当で金銭分配請求権を株主に付与しない場合には、株主総会の特別決議によることとし(会社法309条2項10号)、金銭分配請求権を付与する場合には、株主は金銭の交付を請求することもできることとされました(会社法454条4項)。また一定の基準株式数を定めて、それに満たない株式には金銭を交付することもできることとされています(会社法456条)。

この配当規制の改正は、株主提案権の実務にも大きな影響を与えています。まず株主提案による配当は期末配当とすることもできますし、別途に基準日を設ける配当とすることも可能です。また会社側の配当議案と対立する場合(代替案となるとき)と、会社提案に追加して配当する趣旨の場合と両方ありうることになりました。別途積立金の取り崩しの要否など、配当原資の取り扱いなども注意する必要があります。したがって、株主提案権の有効性や、議案の趣旨の解釈には注意を必要とします。

会社法では、配当以外に自己株式の取得などで会社財産の払戻をすることもありますが、分配可能額の規制として統一的に定められています(会社法461条)。分配可能額の計算にあたっては、最終事業年度の末日の剰余金の額を基本にして自己株式の価額などを控除し、その後期末後の剰余金の分配等の額を加減していくこととされています(会社法446条、同461条、計算規則178条)。また臨時計算書類の制度が導入され(会社法441条)、臨時決算を行った場合には、臨時決算日までの期間損益も分配可能額に反映されることとされています。旧商法時代は、配当規制と資本原則は密接な関係がありましたが、会社法下では、資本原則と分配可能額の規制は疎遠になりました。

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