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中村弁護士コラム 第49回

会社分割と労働者保護手続き

弁護士 中村直人

会社分割をする場合、いろいろな労働者保護手続きが必要になります。

これは少しわかりにくい条文構成になっています。何故かというと、会社分割の商法改正の際、議員提案によって法律案が修正されたためです。

保護手続きとしては、まず平成12年改正商法(「商法等の一部を改正する法律」平成12年法律第90号)附則5条1項で、労働者との協議義務が定められています。これは労働者個人との協議であり、労働組合との協議ではありません。ただし、労働組合が労働者から委任を受けて労働者個人のため協議することは可能ですし、任意に会社が労働組合と協議することも可能です。協議は、会社分割計画書等が本店に備えられる日までに行うこととされています。協議をすれば良く、合意が成立することは必要ありません。協議する事項は、労働契約の承継に関する事項であり、労働契約の内容の変更などは分割承継会社がすることですので、協議の対象にはなりません。協議対象の労働者は、分割する事業に主として又は従として従事する労働者です。この規定は、改正商法の附則に位置しており、会社法施行後もそのまま残っています。本来は、労働者保護という観点からは、労働法に位置づけるべきもので、労働承継法(「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」平成12年法律第103号)に入っていそうな条文です。どうしてこのようなことになったのか、議員修正ですのでよく分かりません。

また、労働承継法では、分割する事業に主として従事する労働者及び従として従事する労働者のうち承継することとされている者に対する通知義務(2条1項)や、一定の範囲の労働者の異議権(4条、5条)、労働組合に対する通知義務(2条2項)のほか、労働者の理解と協力を得るよう努める義務(7条)が定められています。この7条の措置としては、会社は、その全ての事業場において、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合と、それがない場合は労働者の過半数を代表する者と協議し、その他これに準ずる方法によって労働者の理解と協力を得るよう努めることとされています(承継法規則4条)。具体的な内容は、厚生労働省の告示によって詳細に定められています(労働省平成12年12月27日告示第127号)。

結局、会社としては、1.労働者との協議(改正商法附則5条1項)、2.労働者・労働組合への通知(承継法2条)、3.過半数労働組合・過半数代表者等との協議(承継法7条)を行わなければならないことになります。

従来、改正商法5条の協議を一切行わなかった場合には、会社分割無効の原因となるとされてきました。一方承継法の協議義務違反については、その効果は明確でないとされてきました。会社法以外の法律に違反することが、会社法上の効果(分割無効)に結びつくとは考えにくいのです(改正商法の附則に位置するか、承継法に位置するかは大きな違いになるわけです)。

このような状況の中で、初めての最高裁判決が出されました(最判平成22年7月12日)。それによると、改正商法附則5条の協議については、それが全く行われなかったときは、当該労働者は、承継法3条に定める労働契約の承継の効力を争うことができるとしています。会社分割無効とは別に労働契約の承継のみを争うことができるとしていますので、その労働者との関係で、一種の相対効のようなことを考えているようです(岩出・旬刊商事法務1570号7頁、本久・法律時報81巻2号125頁参照)。また承継法7条の措置については、これは努力義務であるから、これに違反しても、直ちに労働契約承継の効力を左右するものではないとしています。分割会社に残りたい場合にはそれでよいのですが、承継会社に行きたい場合には、協議義務違反が相対無効では期待する解決にはならないかも知れません。最判は、事案の判断としては、資料を使用して従業員に説明し、納得しない従業員に対しては3回の協議を行い、労働組合支部との間でも7回にわたり協議を持つなどしているので、説明や協議が著しく不十分であるとはいえないとしています。

実務的には、ややちぐはぐな立法になってわかりにくい分野ですので、協議の程度や違反の効果など、とても参考になるところです。