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中村弁護士コラム 第58回

退職慰労金制度の廃止

弁護士 中村直人

各種のアンケート調査などによると、役員退職慰労金制度を廃止し、又は廃止する予定の会社は、上場会社の約7割に及んでいます。それは株式持合制度が崩れ、安定株主比率が下がったところ、退職慰労金支給議案については、機関投資家等が、業績が悪化したときや大きな不祥事があったとき、あるいは社外役員への支給等に反対するようになったため、議案を出しても可決できるかどうかわからなくなったことが大きな要因です。もし万一否決されてしまえば、退任した役員はなすすべもありません。そこで反対投票の比率が上がってきた会社は、早めに退職慰労金を廃止して、月額報酬等へ振り替えているのです。また業績連動報酬やストック・オプションに振り替える会社も多く、退職金という業績に感応しない報酬体系ではなく、業績に応じた報酬に変更するという大きな流れもみてとれます。平成24年度税制改正で、勤続年数5年以内の役員について、退職慰労金に対する課税の優遇策(いわゆる2分の1課税)が廃止される見込みです。そのため、退職慰労金制度を廃止する会社がさらに増加することが予想されます。

退職慰労金制度を廃止するときは、監査役の意見を聞いた上、取締役会で決議することが多いようです。法的には株主総会に慰労金議案を出さないというだけのことですが、やはりいかなる報酬体系なのか方針を明確にしないと、経営になりません。監査役にも影響を与えるので、監査役の意見も聞いておきます。

廃止する場合、すでに役員として在任していた期間に対応する退職慰労金想定額については、打ち切り支給をする会社が多くなっています。その場合、打ち切り支給の議案を株主総会に付議しますが、通常の退職慰労金議案と比較していくつか留意が必要です。まず支給の時期ですが、特段の配慮をしないと、判例上決議後速やかに支払うことになります。しかし多くの場合は、最終的に役員を退任した時点で支払うこととしていますので、支給時期は最終的に役員を退任する時点であることを議案に書きます(慰労金内規に記載する例もあります。)。また慰労金内規の算式ですが、通常「最終役位」とか、「最終月額」などという形で、退任時の数値等を使用することになっていますが、打ち切り支給の場合には、打ち切り支給時点の数値等を使用するのが通例ですから、内規を変更して、附則などで打ち切り支給の場合の特例を定めておきます。また打ち切り支給決議の後に不祥事が発覚する場合などもあり、減額規定や功労加算規定は支給対象期間の事由について適用するのか、その後現実に支給する時点までの事由も参照するのか、決めておく必要があります。

株主総会に付議するとき、打ち切り支給の議案と、代替報酬である、固定報酬枠の増額の議案、あるいはストック・オプション付与の議案、業績連動報酬の議案などを上程することになりますが、これらを一つの議案として付議することも考えられます。ワンセットの議案でありますし、報酬体系全体としての妥当性を株主に判断してもらうという利点もあります。また役員の退職慰労金に関して、定款に規定がある会社があります。そこでその文言を削除する定款変更議案も付議することが考えられます(必須ではありません)。

株主総会の後の取締役会で、退職慰労金の具体的な額を決定しますが、その場合、まだ在任している取締役がいることになります。その方が特別利害関係人になるのか、必ずしも明らかではありません。筆者は、慰労金内規で上限が一義的に決まっていることですので、特別利害関係人と見る必要はないのではないかと思っていますが、判例も学説もあまり見あたらないところですので、懸念があれば決議からはずれておくのが安全です。監査役については問題ありません。

退職慰労金制度を廃止する場合、役員報酬等の決定の方針を考えることになりますから、それを明確に定めて、有価証券報告書や事業報告(任意)に記載することがよいでしょう。

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