中村直人弁護士コラム 第88回
新型コロナウイルスと株主総会対応
弁護士 中村直人
新型コロナウイルスと株主総会の対応については、検討すべき課題が沢山ある。字数の関係で全部を解説することはとてもできないので、今回は、検討対象となる事項を列挙して、必要なコメントだけ付記する形にさせて頂きたい。あくまでも検討対象のチェック・リストであり、すべてを推奨するわけではない。
1.会場運営
・受付のマスク配布、消毒液配置またはマスク着用での来場のお願い
・スタッフがマスク着用の旨お断りを表示
・高熱者、風邪の症状がある来場者の入場自粛要請等の表示
・受付で、熱・風邪の症状がないかどうかの質問・確認(但し、それだけで入場拒否できるかは検討。同意を得て出席回避)、検温の有無
・株主席の配置(間隔を空ける)、株主着席位置の誘導(前から詰めて座らせない)
・役員のマスク着用の有無、株主席との距離
・役員が感染したとき(感染者、濃厚接触者は欠席、取締役・監査役各一人は確保)
・会場の株主のマイクはハンディタイプよりスタンドタイプか(接触を避けるため)、発言ごとに消毒するか
・総会日までに会場係員等が感染した場合の代替要員の準備(同じオフィスに勤務していない者の配置用意)
・会場の換気、医療関係者の待機、会場の消毒、待合室の廃止、茶菓の接待の廃止
・受付での混雑の回避、開場時間の検討(場内に長時間滞在させない配慮と、受付の集中の回避のバランス)
・開催時刻の検討(電車等混雑の回避、分散化)
2.インターネット中継(来なくて済むように)
・来場に不安がある株主にインターネットでの中継(傍聴型)
・株主のプライバシーに配慮(発言者等の顔の映像なし、質問者に名前を言わせない等)
・質問をHP等で受け付け、HP等で回答するサービス等
・会場で上映するビデオ、スライドや配付資料など掲載、また当日の式次第なども説明
3.議事シナリオ
・極力時間を短縮(計算書類等の報告の簡素化、株主への時短の呼びかけ)
・特殊対応をしていることの説明(受付で、特殊対応や式次第、時短呼びかけ等を記載したパンフレットを配布することも)、ネット中継していることの説明
・議長が感染した場合の次順位者の用意(議長と濃厚接触者にならないように)
・マスクをしない者、咳をする者、受付で熱が確認された者等どういう場合に議長が退場命令を出すかの判断基準と手続きの作成(まず自主的な退場や別室でのビデオ閲覧などを求める等)、他の株主から咳をする者等に対してクレームが出たときの対応
4.来場者数の縮減努力
・来場差し控え・議決権行使書等の活用の呼びかけ
・特に高齢者、持病のある方、妊婦などへ、総会は不特定多数の人が集まる閉鎖空間であり、新型コロナ感染のリスクがあることの説明
・お土産廃止、懇談会・商品説明コーナー等の廃止
5.招集通知対応、HP対応
・招集通知に上記各特殊対応の表記(平成22年の新型インフルのときの事例を参考に)
・上記各特殊対応等についてHP等で事前に周知
6.総会の延期の可否、別会場(緊急時対応プラン)
・総会場の使用中止(たとえば会場のホテルで感染者が発生した等)や外出禁止の公的要請があった場合等の対応。配当の議題があるときは、配当の銀行送金手続きの取りやめができるタイミングより以前でないと延期は困難(決議なしに配当が送金されるのは回避したい)。決議だけしておけば、仮に瑕疵があっても追認決議をする道が残る
・総会日当日に会場が使用できなくなった場合、近隣の場所を用意して株主を誘導
7.スケジュール、その他
・計算書類の作成・監査の可否、スケジュールが間に合わない場合の対応、監査意見への影響
・会計監査人の総会場別室待機の取りやめ、その他総会関係要員の縮小
・想定問答作成、業績予想の有無
・決議通知の有無
・総会担当部署で感染が拡大したときの対応準備
8.参考文献等
・前田雅弘大阪株式懇談会編「会社法 実務問答集T(上)」227頁
・北村雅史大阪株式懇談会編「会社法 実務問答集V」54頁
・経産省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」
・金融庁、東証のHP参照
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