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中村直人弁護士コラム 第89回

6月総会に決算が間に合わない場合の対応

弁護士 中村直人

3月決算の会社で、新型コロナの影響で計算書類等の作成や監査が間に合わない場合、どうすれば良いか。いくつか方法がある。


A:6月に定時総会は開催し、決議事項は決議して、加えて継続会の決議をして、その後速やかに継続会を開催して計算書類等の報告をする方法

B:6月の定時総会は開催せず、たとえば10月頃に株主総会(臨時)を開催して計算書類等の報告や決議事項の決議をする方法

C:6月の定時総会は開催し、決議事項の決議をして終結し、別途臨時総会を開催し、計算書類の報告をする方法

以上が主な選択肢である。


まずAの方法は、継続会をする方法である。継続会は、学説では2週間以内にしなければならないとするものが多いが、実務では1ヶ月程度の期間をおいているものもある。したがって、その程度の期間内に開催できる見通しが必要である。継続会の決議では、継続会を開催する日時と場所は決議しておくのが原則である(議長等に日時・場所の決定を一任することも可能といわれているが、その場合決定後に日時・場所を株主に通知する必要が生じてしまう)。したがって、その時点では継続会の場所を用意しておく必要がある。継続会の招集通知は不要とされているが、可能であれば発送するのが実務である(これに計算書類等も添付する)。継続会の選択肢は、決算が遅れて6月総会には間に合わないが、上記の程度の遅れの範囲内で終了できることは分かっている場合に選択できる。この場合、6月に決議事項の決議をしてしまうので、その議案には注意が必要である。役員の任期について、継続会の場合には、通常はその継続会の終結のときまでが任期になると考えられる(但し、基準日から3か月が経過するときとする説も考えられる)。6月総会終結時点で新役員を就任させたいのであれば、その時点で旧役員が辞任等により退任し、新役員の選任の効力が生じるように議案に記載する。また6月総会で配当の決議をする場合、分配可能額の算定基礎となる計算書類がいつの時点のものになるか(前期か当期か)確認する。実務的には、いずれでも違法とならないようにする。定款変更をして監査等委員会設置会社等に移行する場合には、定款変更の決議の効力発生時点やそれに伴う役員選任の効力発生時点などに留意して議案を作成する。いずれも6月総会の終結(休会とした時)時点で効力を発生させればいいだろう。その場合には、その後の監査手続きなどは、移行後の監査等委員会等がすることになろう。継続会に持ち越す会議の目的事項は、報告事項だけにするのが安全である。上記の通り継続会の開催時期など法的に不明確な点もあるので、決議事項を持ち越すと、その決議について決議取消のリスクが生じるからである。

次にBの方法は、6月の総会を取りやめて、その後用意ができた時点で株主総会を開催する方法である。この場合、期末日を基準とした配当は総会で決議できないことになる(取締役会決議での配当は可能)。決算手続きがどの程度遅れるか不確かな場合には、継続会の方法がとれないので、この方法かCの方法になる。本稿は決算手続きとの関係で総会が遅れるケースを説明しているが、新型コロナ対応で株主総会を開催する時期を遅らせたいという要請があれば、継続会のように短期間で二回も総会を開くことを避けてこの方法によることも考えられる。この選択肢の場合、役員の任期の満了時点について注意が必要である。通常は、本来の6月総会終結予定の時点(基準日から3か月経過時点)で任期は満了すると解されているが、天災地変などの場合には別だとされている(旬刊商事法務2152号41頁参照)。この点、法務省のウェブサイトにおいてQ&Aが掲載されている(http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho06_00076.html)。またそれ以外の決議事項の決議も遅れることになるので、定款変更や再編関係議案など速やかに決議したい事項があれば、この方法にはよらないことになる。いつ頃総会が開催できるか分からない時に、決議事項の決議をしないでいるのは不安定だという心配もある。

次にCの方法は、6月総会は開催して決議事項の決議をし、別途議決権の基準日を定めて改めて臨時総会を開催して報告事項の報告をする方法である。決算手続きは遅れているが、決議事項の決議は予定の時期にしておきたい場合に採用することになる。積み残しが報告事項だけになれば、慌てて臨時総会を開催する必要もないだろう。

いずれのケースでも当てはまるが、決算が遅れる理由として、計算書類等の作成が遅れるケースと、監査手続きが遅れるケースがある。計算書類等の作成自体は可能な場合において、事業報告とその附属明細書は、会計監査人の監査がないので、監査役に送付するとそこから4週間の経過でみなし監査になる(会社法施行規則132条3項)。事業報告だけは先に監査まで終わってしまうことになる。その点、計算書類等と平仄を合わせるのであれば、監査期限の延長の合意をするか、監査役への送付を留保して計算書類等の完成を待つことも考えられる。

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