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中村直人弁護士コラム 第95回

改訂コーポレートガバナンス・コードにおけるサステナビリティの基本方針と開示

弁護士 中村直人

改訂版CGコードでは、補充原則4−2Aで、サステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を定めること、及び補充原則3−1Bで、その取組みについて適切に開示することを求めている。そのCG報告書への記載方法については、東証のコーポレートガバナンス報告書の記載要領やその解説(旬刊商事法務2268号26頁)が出されているし、解説書の出版も多い。しかし実務では、どのような記載にすれば良いか、悩んでいる。そこで、そういう解説書から離れて、何が必要か白紙から考えてみたい。

手順をおって考えてみよう。まずサステナビリティの範囲は、気候変動などの地球環境問題だけでなく、人権の尊重や労働環境への配慮、公正・適切な処遇などに加え、取引先との公正・適正な取引まで含まれている。SDGsに並んでいるような項目は全部含まれている。会社により、また個別課題ごとに、各社で多様なリスクと対応がある。したがって、まず重要課題について、ある程度項目分けをしないと具体性と説得力はないであろう。

また改訂版CGコードは、サステナビリティをリスクとしてだけでなく、収益機会として捉えている。したがって、環境問題への対処でこれだけ大変ですといった話ばかりでなく、どのようなビジネスチャンスになるか、という視点が必要である。当然これは長期的な経営戦略とほとんど重なってくる。

このように考えてくると、サステナビリティの基本方針は、各重要課題についてどういう方針をとるかという、経営方針あるいは経営理念的な部分と、事業ポートフォリオや投資・財務戦略などの経営戦略にかかる部分で構成されることになりそうだ。

次にサステナビリティの推進の仕組みについて考えてみよう。最初に必要なことは、会社自身が進むべき方向性を明確にすることだ。その基本方針を策定し、役職員やステーク・ホールダーに対して宣言する。それによって、役職員の行動基準が決まる。次に推進する部署を定める。担当役員やサステナビリティ委員会などだ。そうすると当然その推進を図るために、到達すべき達成目標を定めることになる。KPIなどである。それも長期目標と短期目標が必要だ。そしてその進捗状況を監督する。たとえば取締役会への定期的な報告などだ。サステナビリティを全社的な経営方針と位置づけるなら、それを推進するインセンティブの仕組みが必要だ。たとえば経営陣や幹部層の人事業績評価基準にサステナビリティの要素を導入する。その内容は、基本方針やKPIと整合的である必要がある。またその価値観を達成するためには、体制の整備も必要だ。たとえば取締役会の構成においてもサステナビリティに詳しい人材を抜擢する必要がある。

こうして何が必要かということを川上から順に考えていくと、ある程度実感が湧くのではないか。これらの全体像を、TCFDなどの枠組みで進めるならば、それに従うことが考えられる。これらの枠組みも同じような考え方であろう(ガバナンスや戦略、リスク管理と指標・目標に分析している)。今回の基本方針の策定やその開示は、各社の置かれた状況によってずいぶん異なってくる。その場合には、順序立てて、体系的に考察することで、説得力と網羅性のある方針になると思う。

CGコードは、資本市場のための開示制度である。だからあくまでもサステナビリティは、企業価値向上の視点で実施される。したがって、投資家やステーク・ホルダーに訴求するためには、最終的には、事業ポートフォリオや研究開発、投資戦略、財務戦略等がどうなって、将来の企業価値がどうなるのかを彼等が推測できるような情報になっている必要がある。時折、今自社でやっている事業が「実はエコです」という宣伝を見かけるが、そのような現状の正当化は、きっと投資家から嫌われると思うので、注意したい。

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